「春」 新川和江
春 新川和江
私はもう悲しむまい
アケビも藤も槻木も
みんな忘れずに芽を吹き出した朝
恵みの春だもの
私はもう悲しむまい
楓もやつでもどうだんも
親しいものがいちどきに訪れた
恵みの春だもの
それにもましてこれはどうであろう
寒い冬の日に伐りたおされてよこになったままの
銀杏の幹から零れるように
芽を吹いたこのあおいものは
あぁ人よ
かの樹木らの偉大なる生存力をたたえよう
すべてが息を吹き返した恵みの春に涙を流そう
過ぎ去った陰惨な冬の苦しみはもう言うまい
地上は明るい輝きに満ちた春の朝だ
私はもう悲しむまい
楓もアケビもヤツデも藤もどうだんも
親しいものが訪れた
輝かしい恵みの春だもの
人よ
私は雌鳥のような理屈抜きの情熱で抱きしめる
希望と親愛のたまごを抱きしめる
緑の影に胸を高鳴らせ、心ふるわせ
私はたまごを抱きしめる
みんな忘れずに芽を吹き出した朝
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近所の小さな公園の藤棚の藤の花が見事に咲いてました。
今日の雨で散らないかな?
明日、見に行ってみよう。